豊美(入江たか子)との結婚を伝えに実家に帰った慎太郎(高田稔)は、父(丸山定夫)と母(英百合子)から反対され、
経済的な理由で地元の財産家の娘=真山百合恵(竹久千恵子)との見合いをするように諭される。
実家は群馬県桐生。父は「第一、真山さんはこの桐生でも一番の旧家で財産家だ」という台詞がある。
本作+後篇はユーチューブにアップされている。
豊美と別れなくてはならないのかと悩んで散策に行く慎太郎。
今回観直して気付いたのだが、この時のバックに流れるのはショパンの「別れの曲」。
ピアノではなくバイオリンの演奏。細かい演出。
小川のような場所を歩く。
小川の土手に寝転ぶ慎太郎。思い悩んでいるとそこに馬に乗った若い女性が通る。
声をかけられる。起き上がると見合いを勧められた百合恵だ。
成瀬映画で男女の出会いのシーンは多々あるが、馬に乗って登場する女性はかなりインパクトがある。
和服姿でおとなしく、慎ましい豊美(入江たか子)との対比で、快活でスポーティな百合恵(竹久千恵子)は魅力的。
この土手だが川幅の感じから「桐生川」の土手ではないか。
桐生市の近くには「渡良瀬川」もあるが、かなり大きい川なので画面の感じとは異なる。
親しくなった慎太郎と百合恵。慎太郎は東京の婚約者・豊美のことを話そうと百合恵を桐生市の「水道山」に誘う。
「明日、水道山で会いましょう」という慎太郎の台詞がある。「水道山」は桐生市にある山(現「水道山公園」)。
「水道山」の東側にあるのが、『妻の心』(1956)に登場する「桐生が岡公園・動物園」。
本作の19年後の『妻の心』の撮影時において、成瀬監督はすでに桐生市への土地勘があったと言えるだろう。